井戸の構造・仕組みと原理について
- 目次
- 1. 井戸の歴史
- 2. 井戸の構造・原理
- 3. 井戸で汲む地下水の種類
- 4. 自噴井戸の原理
井戸の歴史
最近は家庭や公園などでちらほら見かける程度となった井戸ですが、昔は年間を通して多くの人々にとって欠かせないものとして利用されていました。川から遠くても、井戸さえあれば生活ができるため、徐々に井戸が増えていったのです。 生活用水のために集落に作られたのはもちろん、その後、特に多く利用されてきたのが工業用水です。工業用水だけで地盤沈下を防ぐための規制が行われた後も、年間約43億立方メートルも利用されていますが、その他、生活用、農業用などにも役立っており、総使用量はなんと年間147億立方メートルともいわれています。 このように、さまざまな用途にかなり昔から利用されている井戸ですが、自然災害が恐れられている現代、また人気が高まってきています。そこで、人々によって工夫して作られた井戸の原理について、改めて考えお伝えしたいと思います。
井戸の構造・原理
家庭用や災害用の井戸の場合、手押しポンプが使用されているのを見たことがある人は多いと思います。この手押しポンプ、電気がなくても水を汲めるので、災害時でも安心して利用することができます。この水を汲み上げる仕組みはどのようになっているのでしょうか。 簡単にいうと、私たちがコップに入った水を、ストローを使って吸い上げて飲むのと同じ原理です。コップの水の表面は大気圧がかかっている状態であり、かつ、口でストローの中の空気を吸うことでストロー内は真空状態になっています。この二つの働きにより水が吸い上げられます。 井戸のポンプも同様の原理をもとに作られていますので、具体的にご説明しましょう。
- 【1】シリンダー(パイプ)内のピストンが上に動くことで水が上に引っ張られていきます。このとき、呼び水(ポンプを使用する前に入れる水)をポンプ内に入れることで、配管の中の隙間を埋めて空気を抜き、気密性を高くして真空にします。
- 【2】ピストンの先についている木玉の中心には穴があけてあり、ここを水が通ります。この上の部分には弁(サブタ)がついており、ポンプの底にも弁がついています。
- 【3】上方にピストンがある状態から、下に押していくと、木玉の弁が開くので、水が穴からピストンの上に入ってきます。このとき、ピストン底の弁は閉じています。
- 【4】ピストンが下まで到達すると、シリンダーの中の全ての水が、ピストンの上に移動済みとなります。
- 【5】今度はピストンを上に引き上げますが、このときシリンダーの水に押されるため木玉の弁が閉じ、水がシリンダー上部にある口から出てきます。
- 【6】5と同時のタイミングで、シリンダー底の弁が開くので、水がピストン下に入ってきます。
- 【7】3~6を繰り返すことで、何度も地下水を汲み上げることが可能となります。
井戸で汲む地下水の種類
地下水には大きく分けて2種類のものがあります。私たちが使っている井戸水は、そのほとんどが砂や礫などの隙間に存在する地層水で、この地下水を含めて帯水層と呼ばれます。この地下水は不圧地下水とも呼ばれ、浅井戸で汲む水はこの不圧地下水です。 また、圧力を受けている地下水を被圧地下水といい、平野部の深層にある地下水のほとんどがこれに該当します。ただ、穴のあいたパイプを水が通りにくい粘土層や砂礫層に入れると、それよりも高いところまで水が上昇してくることがあります。このような地下水も被圧水と呼ばれ、たとえ浅い井戸でも深井戸と呼ばれます。
自噴井戸の原理
自噴する井戸に魅力を感じる人は多いと思いますが、実は、この自噴井戸は、簡単に掘れるものではありません。雨などが地面に染み込んだ不圧水は、もっとも表層に近いところにありますが、この平野部の不圧水が自噴することはないのです。自噴する状態というのは、次のようなケースです。 標高が高いところから地下を通って雨水が流れてきた際、不透水層のところで流れを阻まれてしまったときにたまった地下水が、行き場がなくなってしまい、水位が上昇して複数の帯水層に流れてしまいます。このとき、かかった圧力が、地表面を越えて高い圧力がかかったときに、自噴することになります。
あなたにおすすめの関連記事
サービス案内
井戸掘りの深さで何が変わるの?井戸の深さのハナシ | 井戸水の排水を下水道に流す際の注意