井戸堀りの規制まとめ
井戸掘りに伴う自治体規制について
地下水は生活用水や工業用水、クリーニングや防災など様々な用途で使われます。また、水温・水質が地表水よりも安定しているというメリットに加え、取水するコストが安く、井戸掘りや井戸掘削を検討するケースも多くなっています。
各自治体によって地盤の状態は異なる場合があります。地下水の取水は地盤に影響を与えるため、地盤沈下などの災害を引き起こす可能性があります。それらを防ぐため井戸掘り・掘削工事や地下水の揚水に関する法律や各自治体による規制が設けられています。
地下水利用のための井戸掘り・井戸掘削を検討されているご家庭や企業の代表者様、事業主様は、必ず工事場所の自治体の規制や法律をご確認ください。
規制項目
井戸掘り・井戸掘削にあたって規制対象となる各種項目を解説していきます。ここでは、東京都環境局の規制を例示します。
地下水揚水施設の構造基準および揚水量の規制
吐出口の断面積※1 | ストレーナーの位置 | 揚水機の出力 | 揚水量の上限 |
---|---|---|---|
6cm^2以上 | 制限なし | 2.2kw以下 | 月平均10m^3/日 かつ最大20m^3/日 |
6cm^2を超え 21cm^2以上のもの | 400~650メートル以深とすること※2 | 制限なし | 制限なし |
21cm^2を超えるもの | 設置禁止 |
※1吐出口が2口以上ある場合はすべての吐出口の断面積の合計。
※2各自治体による。
吐出口の断面積
地下水をくみ上げる揚水機の吐き出し口の面積です。地盤沈下対策を目的として定められた工業用水法、ビル用水法では、井戸の規模をあらわす指標として揚水機の吐出口の断面積が用いられており、6平方センチメートル(口径25mmに相当)以上のものが規制の対象となっています。
吐出口の断面積が6平方センチメートル以上、6平方センチメートル超から21平方センチメートル以上のものでストレーナーの位置、揚水機の出力、揚水量の上限の規制が異なります。21平方センチメートルを超える地下水揚水施設は設置できません。
ストレーナーの位置
ストレーナーの位置とは、井戸のストレーナーの地表面からの深さで表わします。ストレーナーの深さは、通常の土地使用の状態における地表面を基準として測定し、特に人工的に井戸の周囲のみを土盛、かさ上げを行なった場合には、その位置を地表面とは認められません。
また、ストレーナーを2箇所以上に設けている井戸については、最上端にあるストレーナーがその井戸のストレーナーの位置とみなされます。
なお、井戸のストレーナーの位置をより深くしたり、揚水機の吐出口の断面積をより小さくしたりする場合は、事前に必ず都道府県に通知する必要があります。
揚水機の出力
従来は揚水機の出力が300ワット以下の小出力ポンプは、一般家庭の井戸など少量の揚水に使用されてきたことから規制の対象外でした。
しかし、ポンプの省エネ化や能力向上によって、条例規制基準であった日量 10立方センチメートル を超える揚水が可能な小出力ポンプが流通するようになったため、環境確保条例施行規則が改正。平成28年7月1日から、出力300ワット以下の揚水機を含む全ての揚水施設が規制対象になり、都道府県知事等の許可が必要となりました。
ただし、動力を用いない手押しのポンプや、一戸建て住宅で家事用のみに使用するものは、出力300ワットを越える揚水施設のみ規制対象となります。
揚水量の上限
揚水機の吐出口の断面積が6平方センチメートル以下のものについては、1日の揚水量の上限が定められています。
揚水施設を事業等に使用する企業や事業者は、前年の地下水揚水量等を把握し、報告をする義務が生じます。報告された数値は、東京都環境局が調査報告書「都内の地下水揚水量の実態」として、今後の揚水規制のための参考資料として活用されます。